【講師】 柴田 浩一さん
横濱JAZZプロムナード、プロデューサー。
現在、NHK横浜放送局(81.9MHz)にて、毎週水曜日のジャズ番組「FMサウンド☆クルーズ/よこはま発JAZZクルージング」を担当。2011年、NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。 著書「デューク・エリントン」(愛育社)。
講座の中からいくつか切り取ってご紹介します。
リンク先のYoutubeアドレスは、2018/6〜7時点で参考情報のひとつとして掲載しました。
掲載がいつ取り消されるかは全く予測出来ないので悪しからず。(若)
今回で6年目を迎えるこの講座。
すっかり顔なじみの方、今回初参加の方等々、GIG店内は満員御礼となりました。
いよいよ一回目講座の始まりです。
「JAZZの歴史の中で、トランペットはずっと花形だった。JAZZ発祥の地ニューオリンズでは、葬式の荷馬車の後ろにバンドが続いた。行きは厳かに、帰りは楽しげに演奏。その様子を再現したのが、この曲です。」
Louis Armstrong & the All Stars:Flee As a Bird / Oh Didn't He Ramble(1950)
https://www.youtube.com/watch?v=Q4dZ5tmOd7A
M2: Freddie Keppard (cor)
「ジャズの歴史で、Tpの初代キングはバディ・ボールデン。
しかし、技を盗まれるのを嫌って録音依頼を断った為、2代目のFreddie Keppardが歴史に残ることになった。」
Stock Yards Strut(1926)
https://www.youtube.com/watch?v=M2UZY1c6AWU
M4: King Oliver (cor)
「Louis Armstrongを呼び寄せた人。King Oliverと"Jelly Roll" Mortonの二人は、ジャズの(始まりでの)双璧だと思う。」
Dipper Mouth Blues(1923)
https://www.youtube.com/watch?v=BEF9QeHxrYw
M6: Louis Armstrong Wild Man Blues(1927)
「聴けば聴くほど、いい曲。それまでの管楽器は、音域ごとに分担を決める「3菅構成」だったが、この曲では新しいジャズの始まりとなっている。」
https://www.youtube.com/watch?v=xO3k-S_pqK4
M7: Louis Armstrong West End Blues(1928)
「もしジャズで一曲と言われたら、この曲かも知れない。
イントロのサッチモのTpは、ゾクゾクして来る。心して聴いてください。」
https://www.youtube.com/watch?v=W232OsTAMo8
M8: Nick LaRocca (cor) Tiger Rag
「1917年にODJB(Original Dixieland Jazz Band)として吹き込んだ曲。JAZZ100年の歴史での最初の録音となった。あまり評価されていないが、素晴らしいバンドだと思う。」
https://www.youtube.com/watch?v=89fZGnAdago
M9: Bix Beiderbecke (cor) Sorry(1927)
「白人でLouis Armstrongと並び称される人。力まずに創造的なPlayをする。
素晴らしい演奏者だったが、28歳で亡くなっている。」
https://www.youtube.com/watch?v=6-SXihgtQeA
M10: Bix Beiderbecke (cor) From Monday on(1928)
「この曲を好まない人はいないと思う。Bixの演奏部分になると、甘い気分がキリッとする。」
https://www.youtube.com/watch?v=H4vou4_JKNE
M11: Bubber Miley (tp)
「Duke Ellington楽団は、白人向けのコットンクラブでジャングルスタイルの演奏を確立した。
その基調となるTpスタイルは、Bubber Mileyから始まり、楽団内で歌舞伎の様に継承されることになった。」
Black and Tan Fantasy(1927)
https://www.youtube.com/watch?v=UeGs0SleooE
「今回は1930年代から50年代、SwingからBebop迄のTpが対象です。」
M1: Bunny Berigan I Can't Get Started(1937)
「Goodmanが有名になるのに力を貸した人。ボーカルも出来て、この曲<言い出しかねて>は大ヒットした。」
https://www.youtube.com/watch?v=z2BuWDhuT2I
M3: Harry James Sleepy Lagoon
「カーネギーのスターの一人。一時Pops系に行ったが、60年代再びJazzに戻って来た。
華麗なTpを聞いて来ださい。Frank Sinatraを見つけた人。」
https://www.youtube.com/watch?v=t1r6PCa6II0
M4: Roy Eldridge After You've Gone(1943)
「ArmstrongのTpを発展させた人。Tpの素養に溢れている。」
https://www.youtube.com/watch?v=EArHR1pmOhM
M5: Charlie Shavers Dark Eyes(1954)
「Roy Eldridgeと甲乙つけがたい人。大変ユニークなサウンドです。」
M6: Dizzy Gillespie Jump-Did-Le-Ba1(954)
「Bebopを始めた人だが、ラテンも大好きだった。この曲は両方が組み合わさっている。」
https://www.youtube.com/watch?v=SJwcHSUlJOI
M9: Fats Navarro Stop(949)
「25歳で亡くなったが、良く唄うスタイルのTpはClifford Brownに繋がっている。」
https://www.youtube.com/watch?v=7rpQ7mkUfn4
M10: Buck Clayton A Swinging Doll(1961)
「カウント・ベーシー楽団に在籍。この時代を代表する、いぶし銀の様なTp。」
https://www.youtube.com/watch?v=9MS81OVmJdM
M14: Cootie Williams Echoes of Harlem(1936)
「無駄な音が一つもない最盛期の演奏。このソロは、この曲の定番となった。
ミュートのRoll Playも普通のPlayも両方出来る人。」
https://www.youtube.com/watch?v=HJLsvlYE9t8
M16: Clark Terry In Orbit(1958)
「ハード・バップとして活躍、Miles に影響を与えた人。
この曲は、Thelonias Monkとの緊張感あふれる珍しいセッションです。」
https://www.youtube.com/watch?v=elrJ8MrqHv0
M18: Shorty Rogers Taps Miller(1954)
「ソロも編曲も上手く、西海岸で活躍。アルバムの数も多い。」
https://www.youtube.com/watch?v=tfKw9-jEkgw
柴田さん「私が選んだジャズ・トランペットの名盤、録音年月順に紹介します!」
Chet Baker Someone to Watch cover Me(1955)
「一時はマイルスを凌ぐ程の人気を誇っていたが、麻薬トラブルに見舞われる。歌もトランペットも、この人の演奏は悲しく聞こえます。」
https://www.youtube.com/watch?v=tWmx4QxbaPo
Clifford Brown Jordu(1954)
「泉の様にアイデアの溢れるトランペット。
コンサート演奏での名盤。」
Clifford Brown Parisian Thoroughfare(1954)
「Max Roachに呼ばれて一躍有名に、その後のレコードは全てが名演。56年に25歳で自動車事故で亡くなったが、周囲のミュージシャンにとっては相当のショックだった。」
Miles Davis It Never Entered My Mind(1958)
「ジャズTpは、Louis ArmstrongとMilesの二人が柱。
Milesは、常にJazz界をリードし続けた。
この曲は、Tpの叙情的演奏として最高。」
Miles Davis Milestones(1958)
「評論家の間では、Kind of BlueがMilesのベストアルバムとして通説。だが、あえて私はこちらを選ぶ。
Milesだけではなく、このクインテットの凄いメンバーの全体が音楽を演奏する楽しさに溢れている点。特にキャノンボールのソロ。」
Art Farmer Mox Nix(1958)
「暖かみのあるTpの音色。共演者からも慕われ、麻薬に喘ぐMilesを物心両面で支えた。」
Lee Morgan Moanin'(1958)
「極めて有名な曲、パリの Club Saint-Germainでのライブ演奏。
その後世界中で大ヒット、来日時にはだっこちゃんブームと重なり、Funny Jazzが大ブームなった。」
Chet Baker Time on My Hands(1959)
「この人のTpは、Bix Beiderbecke と同様にサッチモの影響を受けていない。ストレートな音でビブラードを付けない演奏。
この曲では、Bill Evans が自分スタイルを確立している点にも注目。」
Kenny Dorham I Had the Craziest Dream(1959)
「Max Roachが、Lee Morganの後釜として迎え入れた人。」
Blue Mitchell I'll Close My Eyes(1960)
「邦題は<瞳を閉じて>。あまり目立たない人だが、このアルバムでのこの曲の演奏は、素晴らしい。Wynton Kellyのピアノも良い。」
Booker Little Aggression(1961)
「演奏スタイルとしては、一番新しい。エリック・ドルフィーの影響をまともにくらった。Tpの力が凄く、素晴らしいソロをとる。
Mal Waldronのピアノも素晴らしく、緊迫感に溢れる演奏となっている。」
Donald Byrd Night Flower(1961)
「ジャズ・メッセンジャーズにケニー・ドーハムの後釜として迎えられたが、引き抜き合戦の様に数多くのバンドに転籍。ハービー・ハンコックを見つけた人でもある。」
Lee Morgan The Sidewinder(1963)
「心躍る様なロック・ビートが印象的な曲。<ジャズ・ロック>という言葉が生まれることになる。」
本日の結論:「名盤は、ひとりでは作れない!」
M1: Miles Davis Shout(1981)
「様々な変遷。その後の休養中に、自分を見つめ直して出して来たのがこの曲。
シンプルなリズムと、シンプルなメロディー。
まるでニューオリンズ時代への原点回帰。それが、Milesの回答だったのか。」
https://www.youtube.com/watch?v=eT0om83L260
M2: Wynton Marsalis 2nd Line(2002)
「18歳でジャズ・メッセンジャーズに加入。
20歳でグラミー賞、ジャズ部門とクラシック部門で同時受賞。
その後、ジャズでは初のピューリッツアー賞も受賞。
考え方もしっかりしており、本来ならば次の巨人になるべき存在。
今ひとつ人気がないが、もう少し様子を見たい。
この曲は、ニューオリンズでの葬式の2列目。そのバンド演奏を再現したもの。」
https://www.youtube.com/watch?v=FlMDR9bLeQM
M3: Roy Hargrove I'm Not So Sure(2007)
「Miles直系のTp。MilesのPop路線を、より華やかな音にしている。」
https://www.youtube.com/watch?v=Uwk5tuYfh4s
M6: Fabrizio Bosso Nutville(2009)
「イタリア人。そのTpは、今や世界中にファンがいる。
Bopperぶりが出ている曲。」
参考:曲は異なりますが、ライブでの演奏風景が分かる動画はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=i5DXgDQQ32w
M9: Christian Scott The Walk(2017)
「アメリカ・インディアンの家系。
ガレスピー仕様の特注トランペットを操る。若いフルート奏者とチームを組んでいる。」
https://www.youtube.com/watch?v=fO33UAFbwtw
M10: Wallace Roney New Morning(2017)
「自他共に認めるMiles二世。Milesグループのメンバーとアルバムを出している正統派。」
https://www.youtube.com/watch?v=emwuq8MXQFo
M11:GRP BIG BAND Cherokee
「Tp5人の内の4人がソロをとる来日時の演奏。楽器としてのTpの魅力が満載。」
https://www.youtube.com/watch?v=izm8diKEQlw
<まとめ>
「Milesの存在があまりにも大き過ぎて、今だにその影響は続いている。
Coltraneの場合も、亡くなってからその影響が消える迄に46年間を要した。
Milesが亡くなったのは1991年、次の世代はそんなに永く待たされるのだろうか。
困ったものだ。
Tpはジャズの歴史を、常にリードして来た。
Marsalisには早くライバルが現れて、次の世代へのリーダーシップを発揮して欲しい。」