「ジャズピアニストの系譜」個性あふれるキーマンたちの系譜
【講師】 柴田 浩一さん
横濱JAZZプロムナード、プロデューサー。
現在、NHK横浜放送局(81.9MHz)にて、毎週水曜日のジャズ番組「FMサウンド☆クルーズ/よこはま発JAZZクルージング」を担当。2011年、NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。 著書「デューク・エリントン」(愛育社)。
講座の中からいくつか切り取ってご紹介します。
リンク先のYoutubeアドレスは、2018/10〜12時点で参考情報のひとつとして掲載しました。
掲載がいつ取り消されるかは全く予測出来ないので悪しからず。(若)
今回で6年目を迎えるこの講座。
すっかり顔なじみの方、今回初参加の方等々、GIG店内は満員御礼となりました。
いよいよ一回目講座の始まりです。
柴田さん「今日は20年代から40年代、約20年間のジャズピアノの変遷を辿ります。」
M3: Jelly Roll Morton(1890~1941)
「ジャズが始まる前にラグタイムと呼ばれるピアノ音楽がありました。
ラグタイムには即興要素がなく、ジャズとは別の音楽。
最初のジャズ即興演奏を行なったのが Jelly Roll Mortonであり、編曲にも素晴らしい才能を発揮しています。」
Black Bottom Stomp(1926)
https://www.youtube.com/watch?v=lcgIrAyNGGM
M7:Earl Hines(1903~1983)
「ルイ・アームストロング楽団の2代目ピアニスト。
アームストロングの明るさと大らかさが、彼のピアノにも現れています。
息の長い活躍をして60年代半ばに再評価されています。」
Glad Rag Doll(1929)
https://www.youtube.com/watch?v=0Np_vCOWyS8
M9:James P. Johnson(1894~1955)
「シカゴがラグタイムから抜け出せないでいる間に、NYではストライド・ピアノと呼ばれる音楽が流行。NY派とかハーレム派と呼ばれています。」
Carolina Shout(1921)
https://www.youtube.com/watch?v=nSFGyipsNsg
M12:Fats Waller(1904~1943)
「ハーレム派の中で最も有名なピアニストがFats Waller。
この曲も凄くヒットしました。」
https://www.youtube.com/watch?v=UAlkSdrO1DY
M14:Duke Ellington(1899~1974)
「NYに移ったエリントンもストライドピアノの影響を受けました。
その後、モダンジャズの傑作と呼ばれるこの演奏が生まれます。」
Money Jungle(1962)
https://www.youtube.com/watch?v=6CuMgLM558s
M15 : Mary Lou Williams(1910~1981)
「CansasCityにも、スライド・ピアニストが活躍していました。
女性ジャズ・ピアニストとしての地位を初めて獲得したのが、Mary Lou Williams。」
A Grand Night for Swinging (1976)
https://www.youtube.com/watch?v=Nz9LYyVMNsg
M18: Count Basie(1904~1984)
「自らの楽団の中、彼のピアノが絶妙なタイミングで入って来ています。New Basie時代の演奏です。」
The Kid from Red Bank(1958)
https://www.youtube.com/watch?v=H6_p8fAQyO0
M19: Art Tatum(1909~1956)
「JAZZピアノ史上、最高のテクニックと言われているのがArt Tatum。」
Tea For Two(1933)
https://www.youtube.com/watch?v=9kMEPYU1Xwg
M20 : Teddy Wilson(1912~1986)
「Benny goodman楽団で活躍したのがTeddy Wilson。
先人からの良さと上手さ、更にスマートで上品なピアノ演奏となっています。」
China Boy(1941)
https://www.youtube.com/watch?v=dtvyAKo-FFA
M1:Bud Powell(1924-1966)
「Bud Powellで歴史が変わるのです。テクニックはもちろん、喜怒哀楽・感情の表現が抜群に優れている。」
Tea for Two(1950)
https://www.youtube.com/watch?v=WqC3Yu2snQA
講座の最後に流した1962年ライブ画像はこちら。
Bud Powellの手の動きが最も分かる画像です。
https://www.youtube.com/watch?v=c_mfGlsaNsA
M5:Duke Jordan(1922-2006)
「何故か日本にファンが多い。特にこの曲が有名。」
Jordu(1976)ライブ風景
M7:Charles Thompson(1918-2016)
「何故かSirの呼称を持つ。チャーリーパーカーの時代の人。
日本人と結婚し、1990年代は千葉に住んでいました。」
1964年のライブ映像
https://www.youtube.com/watch?v=yVHq3RqF5X4
M10:Johnny Guarnieri(1917-1985)
「Teddy Wilson直系のピアニスト。余計な音を弾きすぎない。」
Sometimes I'm Happy(1943)
M13:Russ Freeman(1926-2002)
「いろいろな人とレコーディングしています。
特にシェリー・マンとのDuo、日本人プロデューサーのこのアルバムを聴いてほしい。」
M15:John Lewis (1920-2001)
「MJQとして活躍。クラシック寄りの特徴を持つピアニスト。」
Vendome(1960) ライブ風景
https://www.youtube.com/watch?v=3SY2GLCe8lk
M17: Thelonious Monk (1917-1982)
「美しいメロディを書く一方で、つまずく様な不協和音も書く。
最初は分からなくても、聴き込むと大変魅力のあるピアニスト。
ピアノを打楽器的に使うユニークな手法。
40年代初めから活躍したが、認められたのは50年代。
作曲家としてもJAZZ スタンダードの名曲を、エリントンと並ぶ位数多く書いています。」
Round Midnight(1947)
https://www.youtube.com/watch?v=zre0u5XyNfY
講座の最後に流した1969年ベルリンでのソロ・ライブ映像はこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=ZzWjR6xO-BE
「発展期:オスカー・ピーターソン」
柴田さん「本日のキーワード、個性が重要になる時代。」
M1: Nat "King" Cole(1919 - 1965)
「ピアノトリオを普及させたのはBud Powell 。だが、それ以前にドラムの代わりにギターを入れたピアノトリオのスタイルで活躍していたのがNat "King" Coleです。」
M2: Oscar Peterson(1925 - 2007)
「Oscar PetersonはNat"King" Coleの流れを引き継ぎ、トリオのスタイルでスタートします。もの凄いテクニックの曲がこれ。」
The Surrey with the Fringe on Top(1958)
https://www.youtube.com/watch?v=zuwqBqimzqg
「いわゆる名盤というものが中々ないと言われているが、私はこの曲がOscar Petersonとしての最高だと思う。」
Tonight(1962)
https://www.youtube.com/watch?v=IuTxtqYPU58
M4:Mal Waldron(1925 - 2002)
「日本にファンが多い。セロニアス・モンクの影響を受けたピアニスト。
俗にモールス信号の様なピアノと言われているが、音を選んでいるからとも言える。
Left aloneが有名、だがこの曲もいい。」
Catwalk(1959)
https://www.youtube.com/watch?v=TxSGjSH5wxU
M7:Ray Bryant(1931 - 2011)
「作曲家としても数多く名曲を生み出している。1972年モントルーにPetersonの代役として出場したソロが大人気となった。」
実際のライブ映像がこちら。
https://www.youtube.com/watch?v=qcTV3Pr-wUA
M8:Tommy Flanagan(1930 - 2001)
「とにかく日本人のファンが多い。1957年のアルバムOverseasが大人気。」
https://www.youtube.com/watch?v=Lr5RiPvxzBQ&list=PL0q2VleZJVElGca7QfBYjpTrOrcLzywMl
M10:Horace Silver(1928 - 2014)
「ファンキー王の異名を持つ。
大ヒット曲がこれ。懐かしい60年代のジャズ喫茶の雰囲気です。」
Sister Sadie(1959)
https://www.youtube.com/watch?v=SmO2pM20MrU
M14:Erroll Garner(1921 - 1977)
「Mistyがあまりにも有名。」
実際のライブ映像がこちら
https://www.youtube.com/watch?v=P_tAU3GM9XI
M16:Ralph Sharon(1923 -2015)
「上品でセンス良く、歌の伴奏をすると抜群にうまい。」
Smoke Gets in Your Eyes
講座の最後に流した Oscar Peterson Trio1964年デンマークでのライブ映像はこちら。
アンコールに応えるTrioの熱い演奏風景です。
https://www.youtube.com/watch?v=NTJhHn-TuDY
「完成期:ビル・エヴァンス」
M1:Lennie Tristano(1919 - 1978)
「理論重視の独特のサウンド。トリスターノ学派を形成した、記憶に留めておいて欲しいピアニストです。」
Line up(1955)
https://www.youtube.com/watch?v=tNPZfMacujo
M4:Roland Hanna(1932 -2002)
「Teddy WilsonにThelonious Monk のパウダーを振りかけた様な感じか。
名前にSirが付くピアニストです。」
The Best Things in Life Are Free(1959)
https://www.youtube.com/watch?v=rEpZBTYm-M0
M5:Bill Evans(1929 -1980)
「Bud Powell以来のPiano Trioの概念を変えた人です。.
ベース・ドラムにも均等の役割を与える独自のスタイルで、グループとしてのサウンドを作り上げました。まだ過小評価されていると思います。」
Stella by Starlight(1966)
https://www.youtube.com/watch?v=fsK9XLahmt8
講座の最後に流したライブ映像はこちらです。Trioとしてのメンバー間の連携がよく理解出来る映像です。
Waltz For Debby
https://www.youtube.com/watch?v=dH3GSrCmzC8
AutumLeaves
https://www.youtube.com/watch?v=Hx7X9kGE56U
M8:Don Friedman(1935 -2016)
「名演です。でも、Bill Evansを感じてしまう。」
Circle Waltz(1962)
https://www.youtube.com/watch?v=KNJsn0m8VL8
M9:McCoy Tyner(1938 -)
「コルトレーン・カルテットのピアニストです。
ピアノを横に横に、音を埋める様に弾いている感じがします。」
Inception(1962)
https://www.youtube.com/watch?v=sYvICoEVpCk
M11:Herbie Hancock(1940 -)
「今までのピアニストを統合して、更に新しい要素を加えた人です。
Piano Trioに限界を感じていたのか、管を入れた独自の編成で大ヒットします。」
Maiden Voyage(1965)
M12:Chick Corea(1941 -)
「この曲は、名演奏だと思います。」
Matrix(1968)
https://www.youtube.com/watch?v=nKuQ6gwbPqk
M15:Benny Green(1963 -)
「Oscar Petersonに自分の後継者と言わしめたことで有名。人気が出たが、自分のTrioになってからは大分スタイルが変わっています。」
Benny's Crib(2012)
ライブ映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=3Ycqow0CTfo
柴田さんの総まとめ
「4回を通して、やはり個性がないと人気も出ないしCDも売れない。従って、どうやって個性を出すかが重要です。
但し後半登場の人達については、今後評価が変わるのかも知れません。
前半の人達の評価は、50年位の時間で固まった訳なので、やはり長い時間が必要になりそうです。」