「ジャズサックスの歴史を考察する」

【講師】 柴田 浩一さん
横濱JAZZプロムナード、プロデューサー

 

講座の中からいくつか切り取って概要をご紹介します。

リンク先のYoutubeアドレスは、2019/710時点で参考情報のひとつとして掲載しました。

掲載がいつ取り消されるかは全く予測出来ないので悪しからず。(若)

第1回:7月13日(土) サックス、市民権を得る

柴田さん「コールマン・ホーキンスとレスター・ヤング。

この2人が、コルトレーンが登場する迄サックス王者として君臨します。」

 

M4: Coleman Hawkins(ts) 

「初期の楽団でサックスは、楽器としてはさほど重要視されていませんでした。

フレッチャーヘンダーソン楽団で、最初にデビューしたのがColeman Hawkins

男性的な音色やビブラートが特徴です。」

The Man I Love(1943)

20年代から活躍したが、自分のスタイルを確立した頃の演奏がこちら。

https://www.youtube.com/watch?v=i7m8DRtx_Xc

 

MJohnny Hodges(as) 

「3大アルトサックスの1人として、エリントン楽団にとけ込んで行った。

官能的な音色とコントロールの上手さは素晴らしい。」

On the Sunny Side of the Street(1937)

https://www.youtube.com/watch?v=maM2nb0ieCY

 

M7: Benny Carter(as) 

「3大アルトサックスの1人。軽快な演奏。」

Tenderly (1954)

https://www.youtube.com/watch?v=0b3M7gv_iCE

 

M8 :Willie Smith(as) 

「3大アルトサックスの1人だが、上の2人に比べると目立たない。

だがこの曲で、一世一代のソロを奏でることになる。」

Stardust(1947)  最初のソロ・パートが、Willie Smith

https://www.youtube.com/watch?v=KnTPzKrTMmU

 

M12: Lester Young(ts) 

Hawkinsと比べると、こちらは女性的な音色で上品。ビブラートも付けない。

レスター節と呼ばれるフレーズ繰り返しが特徴。」

Lester Leaps in1939

https://www.youtube.com/watch?v=zXwXKUrRhPo

 

M13:Herschel Evans(ts) 

「テキサス州で同じ様なスタイルが流行しテキサステナーと呼ばれる様になった。その元祖がこの人。」

Blue and Sentimental(1938)

https://www.youtube.com/watch?v=Djcti31JFGg

 

 M15:Illinois Jacqet(ts)

「こちらもテキサステナーのひとり。この曲が、大受けした。」

Flying Home No. 1(1954)

https://www.youtube.com/watch?v=Q3QqWErne1w

 

M17:Chu Berry(ts) 

「33才で亡くなり知られていないが、Hawkins派の上手い演奏。」

On the Sunny Side of the Street(1954)

https://www.youtube.com/watch?v=tSnqSeF3ehI

 

 

柴田さん「サックス演奏で、品があるとかないとかの印象を語ることがある。それは、どこから来るのだろうか。

自論で整理すると、同じフレーズの繰り返し・トリッキーな音出し・喋りながら吹く等の特徴が重なると、品のない演奏と感じてしまう。」

 

回:713()「ビ・バップ革命」

柴田さん「前回は、20〜30年代が舞台。今日は、その後の流れを説明します。」 

 

M1:Charlie Parker(as) 

「40年代になって突如として登場したビ・バップ。誰よりも速く、独創的で音符の数が多い演奏。ジャズ界もかなり混乱しました。

Just Friends (1949)

Strings をバックに、Parker演奏の中では綺麗に吹いている感じがする曲。

https://www.youtube.com/watch?v=IwMjxAEnPwE

 

M3: Gene Ammons(ts) 

Lester派だが、音はHawkins的。大きく力強い音で圧倒します。」

Blue Ammons (1960)

https://www.youtube.com/watch?v=meDimn_zcMg

 

M5: Wardell Gray(ts) 

Lesterの影響を受けたが、音はHawkins的。

34歳で亡くなった。もし生きていればその後のTS界を変えたかも知れない。味のある絞り出す様な音。」

Twisted(1949)

https://www.youtube.com/watch?v=99CJEPIeGmI

 

M6: Dexter Gordon(ts) 

「ヨーロッパで活躍、パリ録音が有名。吹きまくっている感じが良い。

映画「ラウンド・ミッドナイト」で主役を務め、アカデミー主演男優賞にノミネートされた。」

Broadway (1963)

https://www.youtube.com/watch?v=4OripwqLlAE

 

M8:Paul Gonsalves(ts) 

「個人的には一番好きなテナーマン。Ellington楽団を再生させたという功績も大だが、独自スタイルの演奏は、Coltraneにも影響を与えているのではないだろうか。

一般にWebsterの影響を受けたと評されるが、彼独自のスタイルであり、評論家は誤解している。」

Tell It the Way It Is (1963)  

https://www.youtube.com/watch?v=Un8dMqgbaGE

 

M11:Jackie McLean(as) 

Charlie Parkerを、よりもっと先に進めようとした人。だが、フリージャズの方へ行ってしまった。いわゆる泣き節。」

Left Alone(1959)

https://www.youtube.com/watch?v=ywJTxycEvmY

 

M14:Gerry Mulligan(bs) 

「バリトン・サックス。Zoot Simsとの共演が数多い。

ピアノの入らないカルテット演奏は凄い。」

Lullaby of the Leaves (1952

ライブ演奏の音源がありました。

https://www.youtube.com/watch?v=Wn9iwbRp5Ak

 

回:8月23日(「50年代から、前編」

 

M1:Sonny Rollins(ts)

Coltraneよりも早く傑出。豪放で明るく、ユーモアあり。

Oleo (1959) ピアノ・レスのトリオ曲から。

https://www.youtube.com/watch?v=Pse9wHphsPI

 

M2: John Coltrane(ts)

Rollinsに遅れること3年。最初は、バラードが上手いがそう目立たない存在だった。

だがこの曲Giant Stepsで、存在が急上昇することになる。

2人の共通点は、Milesとの共演。Milesは、Jazz界全体を展望していたことになる。

Giant Steps (1960)  ライブ版。

https://www.youtube.com/watch?v=IgdiffT71HA

 

M3: Stan Getz(ts)

Woody Herman楽団の出身。素晴らしい実力の持ち主。」

Tis Autumn (1952) バラードの名盤

https://www.youtube.com/watch?v=818jhl8QxaY

 

M5: Lee Konitz(as) & Warne Marsh(ts)

「独自の音楽理論を持つトリスターノ学派の一番弟子が、Lee Konitz(as)

この人の登場で、Parker一辺倒だったSaxの選択肢が広まることになった。」

There Will Never Be Another You (1955)

https://www.youtube.com/watch?v=xiJeLM7TUBA

 

M6:PArt Pepper(as)

「日本で高い人気を持ち、アドリブが上手い。

後に麻薬トラブルで苦しむ。若い頃の演奏が絶対お勧め。」

What's New (1954)   27歳の時の演奏。

https://www.youtube.com/watch?v=Kx4SZqCh6dw

  

M13:Hank Mobley(ts)

Rollins派。素晴らしく上手いのだが、RollinsColtraneの間にいたことの不運。

過小評価されている。

Out of Joe's Bag (1961)

残念ながら、YouTubeにも該当なし

 

M15:Benny Golson(ts)

「現役90歳、ついこの間来日した。名曲を多数書いている。

独特のフレージング。」

 Just By Myself1962

https://www.youtube.com/watch?v=sPS_u2bjj1c

 

柴田さん

「1回目では、コールマン・ホーキングとレスター・ヤング。

2回目では、チャーリーパーカー。3回目では、リー・コニッツ。

新しいスタイルの演奏者が登場し、Saxの選択肢が増えて行きます。

次回は、その継承者たちと今の人たちの動きを見ていきます。」

 

4回:97(「50年代から、後編」

 

M1:John Coltrane(ts) 

「前回の紹介から4年後。この2年後には神格化されるので、多分これがピークの演奏と言えるでしょう。」

Bessie's Blues (1964)

https://www.youtube.com/watch?v=XMC2bvHk0Bo

 

M2: Ornette Coleman(as) 

Coltraneより1年先行している。ゴールデン・サークルでのコールマンの演奏は最高。」

The Sphinx  (1958) 彼が衝撃的なレビューを飾ったアルバムから。

https://www.youtube.com/watch?v=Lp60JUI55Pg

 

M3: Eric Dolphy(as) 

Colemanと時を同じくして、フリージャズ。若くして亡くなったが、もっと長生きしていれば、彼は一体どんなスタイルに行き着いただろうか。」

Out There(1960)

https://www.youtube.com/watch?v=fYOxnSecjq0

 

M6:Joe Henderson(ts) 

「明らかに、過小評価されている人。抑え気味だが、素晴らしい演奏。」

Lotus Blossom(1991)

https://www.youtube.com/watch?v=CrvDViujzNk

 

M8:Charles Lloyd(ts) 

「66年のモンタレー録音。改めて聞くととてもいい演奏だと思う。キース・ジャレットのピアノも良い。」

Forest Flower(1966)

https://www.youtube.com/watch?v=NIwrlkLk6nY

 

M10:John Coltrane(ts) 

「60年代から80年代まで、サックス界はColtrane一色となり、全員が同じ音を出していた傾向がある。」

Say It (1962)

https://www.youtube.com/watch?v=abp2gdf1x48

この後同じ曲を、Pharoah Sanders(ts) Michael Brecker(ts) と聴き比べ。

 

M13:Branford Marsalis(ts) 

Marsalis兄弟の長男。この人も、幅広い活動をしている。

Three Little Words(1988) 昔のスタンダード・ナンバーから

https://www.youtube.com/watch?v=ho6SGnfTBl0

 

M14:Joshua Redman(ts) 

69年生まれの50歳。勢いのある演奏で、とても上手い。」

DGAF(2018) 最近のライブ映像から。

https://www.youtube.com/watch?v=sUPn8ImZNZo

 

柴田さん

「60年代は変化の多い年で、JAZZ全体でいろいろなスタイルが現れた。

進むべき方向が良く分からなくなった中、Coltraneは自分のスタイルを追求して変化して行った。

さて、これからのサックス界はどうなるか。

今のままでは、新しいリーダーが出て来ることは考えにくい。その点が、何とも残念です。」