ALL ABOUT JAZZ 2014
JAZZ歴史講座第二弾「モダンジャズの時代」
2014/4/11〜5/17 全4回記録
【講師】 柴田 浩一さん
横濱JAZZプロムナード、プロデューサー。
現在、NHK横浜放送局(81.9MHz)にて、毎週水曜日のジャズ番組「FMサウンド☆クルーズ/よこはま発JAZZクルージング」を担当。2011年、NHK関東甲信越地域放送文化賞を受賞。著書「デューク・エリントン」(愛育社)。
2013年に実施した歴史講座第一弾の内容は、こちらです。
薄暗いリトルジョン店内が、受講生で満員になりました。
いよいよ一回目講座の始まりです。
受講生もグラスを片手に、音源と柴田さんの語りに耳をそば立てます。
この日準備された音源は10曲。
まずは前回講座のおさらいとして、チャーリー・パーカーによるビ・バップの代表曲がM1・M2と続きます。
前回講座の4回目でも紹介した曲なので、こちらをご覧ください。
「バイタリティーに富むが、反面落ち着かないビ・バップ」が勢いを持つと、今度はその反動として「抑制されたアンサンブル重視の曲」が登場します。
「自分らしさを確立しようとしていたマイルス・デイビス」による「クールの誕生」、M3ではマイルス率いるNONET(9重層楽団)の代表曲が流れます。
https://www.youtube.com/watch?v=t4X7W4FYCSg
クールの流れは白人バンドにも展開して行きますが、「映画音楽のスタジオのある西海岸で、ウエストコース・ジャズとして発展していく」ことになります。
M4は、ジェリー・マリガン率いるピアノなしカルテットの演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=GXtMQQMCLOA
このカルテットでドラムを担当していたチコ・ハミルトンが、映画「ミッドナイトジャズ」のテーマ曲として演奏している曲がM5。
貴重なライブ映像がYoutubeにあったので、こちらを。
https://www.youtube.com/watch?v=TZW29d6T8TM
さてクールの延長として発展して来たウエスト・コースト・ジャズですが、M6のシエリーマンのグループ演奏では、柴田さん曰く「明るくてオレンジがぶりと言った感じ」の別の雰囲気になって来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=4F3tL5JVaqM
M4でトランペットを担当していたチェット・ベイカーが、「その中性的な声のボーカルで一躍有名になった」のがM7。
https://www.youtube.com/watch?v=BHsMXQRiapA
さて「ウエスト・コースト・ジャズの中心人物と言えば、この人」アート・ペッパーがM9で登場します。
「アドリブがうまくて、日本でも最も人気がある。速い曲もいいが、特にバラードがしなやかでとても良い」
M9は、ジミー・ジェフリーによるピアノなしのトリオ演奏。
「ウェストコーストだからと言う訳でもないが、この様な意欲的な新しいバンド編成もこの時代の特徴。」
https://www.youtube.com/watch?v=d60QUwAPSBI
さて1回目の最後M10は、ショーティー・ロジャース率いるグループ。
「カウント・ベーシーよりもモダンであか抜けている。
編曲者としてもっと注目されるべき人。」
柴田さんのこのコメントを裏付ける様な貴重なTVライブの映像を、Youtubeで見つけました。
確かに、もの凄くモダンでおしゃれな演奏です。是非ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=ChBpj8VGbsc
柴田さんの総括
「クールのエッセンスが、白人中心のアンサンブル重視のジャズとして
ウエスト・コースト・ジャズに発展した。
クールでは味わえなかった明るいモダンな感じも加わった。
この時代の現象として発生し今はもう存在しないが、とても印象に残る。」
一回目の講座は、以上で終了。次回は、ハードバップの特集です。(若)
ご注意:リンク先のYoutubeアドレスは、2014/04/13時点で参考情報のひとつとして掲載しました。掲載がいつ取り消されるかは全く予測出来ないので悪しからず。
前回は、バップの反動から生まれたクールがウエスト・コースト・ジャズに発展した流れを説明しました。
今回は、クールに対して「バップの修正版/ハード・バップ」が登場して来る流れを説明します。
「モダン・ジャズの時代とは、ジャズのメイン・ストリームとしてのハード・バップ、それ以降の時代を示す。」これが、柴田さんによる定義です。
M1:Dig/ Miles
Davis Sextet 1951
ハード・バップの主役として登場するのは、またしてもマイルス・デイビス。
マイルスが24才の時の演奏です。
https://www.youtube.com/watch?v=1F75XdUYYHo
M2:Parisian Thoroughfare(パリの歩道)
Clifford Brown/Max RoachQuintet 1954 |
クリフォード・ブラウンとマックス・ローチの登場。
クリフォード・ブラウン、「若くして交通事故で亡くなった天才トランペッター。もし生きていればどうであったかと、今でも多くの人に語られている。」
https://www.youtube.com/watch?v=dbRrVIAqQs8
M3:Concorde/Modern Jazz Quartet (MJQ) 1955
「クラシックもこなすジョン・ルイス、黒人ファンキー風のミルト・ジャクソン。この二人の対比が、MJQの魅力です。」
https://www.youtube.com/watch?v=inHEiK5t1J4
M4:Moritat/Sonny Rollins Quartet 1956
ソニー・ロリンズのモリタート。
柴田さん曰く「この人のアドリブは、五本の指に入ると思う。」
https://www.youtube.com/watch?v=RnISZLEPOYM
M5:Milestones/Art Blakey & Jazz Messengers 1958
再度マイルス・デイビスが動きます。モード奏法の登場。
「モード奏法により、アドリブの枠がコードからメロディーにも広がった」
「この曲、キャノンボール・アダレイのソロのアドリブは実に素晴らしい。」
https://www.youtube.com/watch?v=1pvmfbOEjKY
M6:Moanin'/Art Blakey & Jazz Messengers 1958
「黒人らしさを強調したファンキー、同じフレーズの繰り返しで興奮をあおる」
日本中が、このフレーズに酔っていた時代。
珍しいライブ映像が、You tubeにありました。
https://www.youtube.com/watch?v=ynZDm50EgBY
M7:Resolution (A Love Supreme)/John Coltrane Quartet 1964
二回目講座の最後は、コルトレーン「至上の愛」のアルバムから「決断」。
「もの凄く真剣に音楽に向き合って変化して行ったコルトレーン、フリー・ジャズに行く直前の曲がこの曲。この曲こそが、コルトレーンの集大成だと思う。」
https://www.youtube.com/watch?v=O6pSffe4k60
「ハード・バップ以降のジャズについては、いろいろな人達がコメントしている。
だが僕は、ジャズのメイン・ストリームとしては、ハード・バップが未だに続いているのだと思う。」
柴田さんのまとめの言葉です。
講義の後、参加者から寄せられた多くの質問。
その全てに、柴田さんから丁寧な回答をいただきました。
中味の濃い二回目講座が終了しました。
次回のテーマは、「ボサ・ノヴァとジャズ・ロック」です。(若)
50年代の後半、ブラジルの若い知識層の間で生まれた新しい音楽ボサノヴァ、ジャズのスタイルとしては、一番新しいものです。
M1:想いあふれて/Joao Gilberto (vo, g)
1958 [Chega de Saudade]
「翌59年の映画[黒いオルフェ]の挿入歌として、世界中に有名になったボサノヴァの代表曲です」
http://www.youtube.com/watch?v=Uk00Vcld2A0
M2:デサフィナード/Stan Getz(ts) & Charlie Byrd(g)
1962[Jazz Samba]
「M1ではまだはっきりしなかったボサノバのリズムが、この曲ではっきりします」
珍しいTVライブ映像がYoutubeにありました。
http://www.youtube.com/watch?v=991uASejkY8
M3:イパネマの娘/Stan Getz(ts), Joao Gilberto(vo, g)
A.C. Jobim(p),A. Gilberto(vo)
1963[Getz / Gilberto]
「Joao Gilbertoがポルトガル語で歌った部分が何故かカットされて、歌手ではないA. Gilbertoが英語で歌った部分が世界中で大ヒットすることになった」
https://www.youtube.com/watch?v=JJdOqVmw2z0
M4:コンコヴァード/Antonio Carlos Jobim (p)
1963[The Composer of Desafinado, Plays]
「Antonio Carlos Jobimは、数々の美しい曲を残している。
20世紀の作曲家の中でも上位に来る凄い人だと思う」
https://www.youtube.com/watch?v=qXboPZ1VS_s
M5:アンド・アイ・ラブ・ハー/Gary McFarland(vib, arr) & His Orch.
1964[Soft Samba]
「BEATLESの曲。何と言っても口笛が素晴らしい」
http://www.youtube.com/watch?v=9yEDXGMZ2rY
M6:リカード・ボサ・ノヴァ/Hank Mobley(ts) Quintet
1965[dippin']
「ボサノヴァなのかロックなのか、境界線がない感じ。
ボサノヴァはブームで終わるが、何故か日本だけで生き延びている」
M7:ウオーターメロン・マン/Herbie Hancock(p) Quintet
1962[Takin' Off]
「ここからジャズロックに入る。ハービー・ハンコックのデビュー曲。
翌年から、マイルスの第二次黄金時代のメンバーに加わることになる」
http://www.youtube.com/watch?v=4z8Rt4nvd-I
M8:The Sidewinder/Lee Morgan (tp) Quintet
1963[The Sidewinder]
「とにかく素晴らしい演奏。このメンバーは凄い」
https://www.youtube.com/watch?v=T5jFPrx51Dc
M9:ソング・フォー・マイ・ファザー/The Horace Silver(p) Quintet
1964[Song for My Father]
「ホレスは、ジャズメッセンジャーズの初期のメンバーだった。
とにかく大ヒットした曲」
http://www.youtube.com/watch?v=boVaez6rVNA
M10:ジ・イン・クラウド/The Ramsey Lewis(p) Trio
1965[The " In" Crowd]
「少しやりすぎると品がなくなる感じもする演奏スタイルだが、ポピュラーのファンをJAZZに引き込んだのは功績と言える」
http://www.youtube.com/watch?v=0vJaJXZ6NNE
「ハード・バップ以降のJAZZは、何か新しいものを求めて行った。
ボサノヴァ、ジャズ・ロック、フリー等。」
「1960年代にJAZZの手法は、ひと通り出尽くしたと考えている。
だから、今のJAZZは昔のスタイルを引き継いでいる。
おそらく今後も、JAZZの基本は変わらないと思う。」
以上が、柴田さんのまとめの言葉です。
次回は最終回、タイトルは「その他のジャズとミュージシャン」。
広い視野で、JAZZの歴史講座を締めくくって貰います。
ご期待ください。(若)
M1: The Sphinx /Ornette Coleman(as) Quintet
1958[Somethig Elese!!!!]
「前回ボサノヴァはブラジルが発祥でしたが、同じ頃アメリカのJAZZ界では衝撃的な変化が起こります。当時アヴァンギャルドJAZZとも言われていたフリーJAZZの誕生。
Ornette Colemanのアルバムについては、評論家の意見も完全に二つに分かれましたが、2001年には高松宮記念世界文化賞も受賞しています。メロディー・ラインの大変美しい曲です。」
https://www.youtube.com/watch?v=Lp60JUI55Pg
M2 : Waltz for Debby /Bill Evans(p) Trio
1961[Waltz for Debby]
「60年代に入ってからのBill Evansの活躍は、その後のジャズピアニストに多大な影響を及ぼすことになります。この三人のインタープレイ、集中力の凄さを聞いてください。」
YouTubeにあった珍しいTVライブ映像、インタープレイの凄さを目でも確認することが出来ます。
https://www.youtube.com/watch?v=dH3GSrCmzC8
M3:Hat and Beard /Eric Dolphy(as) Quintet
1964[Out to Lunch]
「Eric DolphyもOrnette Colemanの影響を受けていますが、36才で亡くなります。
馬の嘶きの様に聞こえるASの音。ジャズのサウンドで、ベスト10に入ると思います。この曲のタイトルは、セレニアス・モンクを意識したものです」
https://www.youtube.com/watch?v=7tnPkQufnZY
M4: Maiden Voyage /Herbie Hancock(p) Quintet
1965[Maiden Voyage]
「前回も紹介したHerbie Hancockは、マイルスのバンドに入りそのメンバーを借りて録音したのがこの曲です。
抑制のきいたクールな感じ、でもそのクールが熱っぽい。
まさに新しいジャズの始まりを象徴するアルバムです」
https://www.youtube.com/watch?v=hwmRQ0PBtXU
M5: Matrix /Chick Corea(p) Trio
1968[Now He Sings,Now He Sobs]
「このアルバムも大ヒットしました。ベースとドラムも凄い技量、この三人のインタープレイを聞いてください」
https://www.youtube.com/watch?v=Y9rxeyzyKVw
M6:Code M. D. /Miles Davis(tp) Septet
1983:[Decoy]
「ジャズ界のリーダー、マイルスの後半はエレクトリックを活用した活躍となります。
これはジャズロックの影響と言うのではなく、単純なリズムに戻ろうとしてロックになり、メロディーを敷き詰めようとしてエレクトリックになったんだと僕は思う。
純粋に常に新しいコトをやりたいと思った結果が、このスタイルなのでしょう」
YouTubeにあった珍しい日本での野外ステージの演奏風景です。
https://www.youtube.com/watch?v=XTWQLgdXqT4
M7: Chasing After Love /Toshiko Akiyoshi Jazz Orch
1991[カーネギーオーケストラの演奏]
「我らが秋吉さんの登場です。
ビッグバンド・作曲・編曲の三部門でトップを独占。
カーネギーオーケストラとのこの演奏では、ルータバキンとゲストのフレディ・ハバートのソロの応酬が聴き所です」
M7とは違いますが、ビッグバンドの演奏シーンの映像です。
https://www.youtube.com/watch?v=63_qsIqSv1w
M8:Portrait of Louis Armstrong/
Wynton Marsalis(tp) with Lincoln Center Jazz Orch.
1998[Live In Swing City]
Wynton Marsalisの登場。ジャズの次のリーダーを自覚したあまりに完璧なバンド。
この曲は、デューク・エリントンがルイ・アームストロングの為に書いた曲です」
https://www.youtube.com/watch?v=HSyMcxwz9w4
M9:Shaw 'Nuff /Keith Jarrett(p) Trio
2001[Yesterdays(in Tokyo)]
「最後は、Keith Jarrett。ジャズっぽいかどうかは別にして、ピアノ演奏をソロで聞ける人は意外に少ない。
RedGarland、Bill Evans、Keith Jarrett、この三人がいずれもマイルスのバンドに参加していたことは興味深い」
柴田さんのまとめ
「50年代から60年代の変遷を、1時間で辿って来た。
間違いなく今のジャズは、今日聞いた人達の演奏で育っている。
紹介した曲はごく一部なので、気に入ったアルバムのCDを買って、自分の意志で一歩踏み出して聞いてみて欲しい。
そうすれば、ジャズはもっと楽しいものになります!」
昨年から通算8回にわたるジャズの歴史講座が修了しました。
次の新しい企画の場での再会を誓って、解散しました。(若)